Ⅶ 『付加価値創出を意識した経営』のススメ(論文連続掲載❼)

更新日:2 日前

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本稿に関連して、発展的なご意見やご示唆を頂戴できる機会がございましたらありがたく存じます。また、企業経営者・ガバナンス実務者などを広く含んで、ご関心をお持ちの方は、公式サイトのフォーム(お問い合わせ | Toshihiko Fukuta 公式サイト)よりお知らせください。
論文全文👇
❶「Ⅶ」(第7節)の3行要約
「経済成長」の観点からは、『DS経営(スズキトモ教授)』や『「総付加価値」をコミットする構造計画研究所』をさらに進める形で、「分配」から「貢献」へ、「売上・利益」から「支出」への経営視点の変換と、社内から社外への視野の拡張が必要です。
企業が支出(人件費)と利益で生み出す内部付加価値(社内)に、その他支出で生み出す外部付加価値(社外)を加えた社会的付加価値全体にコミットする経営、すなわち、『付加価値創出を意識した経営』を提案する。
この経営指針は、ステークホルダーの「コミュニティー・社会」を「経済成長(社会)」へと再定義する『社会的総付加価値額経営』であり、狭小な意味での社会貢献とは異なり、自ら経営環境の改善に挑む超能動的な企業行動であり、公器としての企業の究極の理念です。
❷本文 「Ⅶ」(第7節)まるごと掲載
第3部 提案
Ⅶ 『付加価値創出を意識した経営』のススメ
1 成長投資ガイダンスを超えて
今回のCGコード改訂とともに経産省が打ち出した『成長投資ガイダンス』では、CG改革が成長投資の拡大に結び付いていないことを示す「新たなパラドックス」の解決方法として、経済的付加価値の総量を拡大していくことが提唱されています。しかしながら、具体的に示された経済的付加価値指標である『価値創造(EP)』は、人件費や各種投資・支払いを差し引いた後の営業利益ベースの指標に止まり、これまでの利益主義、資本効率経営を修正するものではありません。
私の主張は、経済成長のない失われた30年のデフレ経済のような社会全体の総需要が乏しい経済社会において、個社にこの利益主義、資本効率経営を強いると、激しいコストカット競争となり、新たな投資が生まれず、経済全体がデフレスパイラルに突入してしまう『合成の誤謬』に陥るとの問題提起です。
現在、ようやくGDPに直結する『付加価値額』を重視した経営理論や会社が登場していることを、Ⅵ章でご紹介しました。これらは画期的な変化であると捉えていますが、経済社会全体の成長を考える場合には、もう数段階の拡張が必要だと考えます。ここが、本論考の肝の部分となります。
2 「分配」から「貢献」へ、「売上・利益」から「支出」へ
「誰かがお金を使うから誰かの所得が生まれます。」従って、まず重要なことは、「分配」から一歩踏み出して「支出」として捉えることを提案します。「分配」は、稼いだ後の「配分」を指すため、「支出」の方が「稼ぐ」という能動的な企業行動により結び付くと考えます。世の中の付加価値合計=所得合計を直接増やすイメージでとらえるために、「分配」ではなく「支出」で捉えるべきとの主張です。

そして、さらに重要なのが、自社が生み出す人件費と利益である「内部生産価値」だけでなく、原価や設備(減価償却)・販管費として支出した他社の付加価値部分への支出=「他社への付加価値貢献」の拡大を意識した経営が重要であると強く主張します。これらを合わせて、自社および他社貢献をも意識した経営こそが、私の「経済成長」の視点からの、個別企業が採用し得る経営指針ではないかとの提案です。株主だけのための「資本コストや株価を意識した経営」だけでなく、経済成長への貢献である「付加価値創出を意識した経営」への拡張・大転換となります。
3 『社会的総付加価値額経営』
ステークホルダー資本主義が登場してから7年程度、未だ日本社会はこの意味や意義について咀嚼できていないと私は考えますが、このステークホルダーに対する考え方を再定義し、「付加価値創出を意識した経営」に統合させることで、当該概念に関する整理・定着の方向性をさらに強化して示したいと思います。具体的には、「株主」、「従業員」、「顧客」、「仕入先」に、「経済成長(社会)」を加えた経営指針としての『社会的総付加価値額経営』の提案です。

レベル1~5の5段階が示しているのは、どの経営指針が優れているかという意味ではありません。あくまでもどの範囲までのステークホルダーを意識した経営かを示しているだけです。レベル1の利益・ROE・ROIC・EPS・株主価値などに結びつくのは「株主」を意識した「利益最大化経営(利益を増やす)」です。レベル2の賃上げ・労働分配率、人的資本、キャピタルアロケーションなどに結びつくのは「株主」や「従業員」を意識した「分配再考型経営(分配を改善する)」と定義します。レベル3のイノベーション・商品開発・顧客価値、社会価値などに結びつくのは、「株主」や「顧客」を意識した「価値創造経営(価値を生み出す)」であると認識します。ここで留意したいのは、「株主」以外の「従業員」や「顧客」を意識するとは言っても、基本的には定性的な経営指針の場合であり、その意味においてレベル2やレベル3はレベル1の修正の範囲にあると捉えます。
これに対して、レベル4は、付加価値額(人件費+利益)にコミットする経営であり、定性的な曖昧さのない、「株主」や「従業員」を明示した「付加価値額経営(内部付加価値額を増やす)」です。さらに、これに分配における商品開発やサプライチェーン構築等に関する投資まで含めれば、「顧客」や「仕入先」を定量的に意識した経営にも位置付けられると考えます。スズキトモ教授が提唱されるDS経営はまさにこの位置づけにあるものと理解しています。
そして私が提唱したいのがレベル5とした『社会的総付加価値額経営(社会の付加価値額を増やす)』です。ステークホルダーの一般的認識である「コミュニティー・地域社会」を、具体的に「経済成長(社会)」と再定義して、前項でも述べた「支出」ベースで経営を捉えるというものです。原材料仕入れから、設備投資、販売管理関係の支出を含み、人件費+利益を「額」で具体的に捉えて、「株主」「従業員」「顧客」「仕入先」、そして「経済成長(社会)」への一気通貫の貢献を意識した経営です。
ここで、『社会的総付加価値額経営』はどのようにKPIを設定し、開示・訴求すればよいかについても、事例的に触れておこうと思います。基本的には「額」の増加率を示していくことが考えられます。その「額」はトータルだけでなく、ステークホルダー単位で説明することもできるはずです。その際、従来の一義的な価格主義ではなく独自の価値基準を示すことが重要です。仕入れ先であれば、技術に対する評価基準や大企業だけでなく中小企業に視点を置いた支出を訴求することにも意味があると思います。是非、企業としての考え方を整理して、企業行動に結びつけ、表現してもらいたいと思います。ただし、重要なことがあります。総合的には「額」に拘る説明力が必要になるということです。ここを外すと「定性的な言い訳」になりかねないからです。
今回のコーポレートガバナンス・コード改訂においては、冒頭の「本コードの目的」の1行目に、「上場会社は、株主から経営を付託された者としての責任(受託者責任)をはじめ、様々なステークホルダーに対する責務を負っていることを認識して運営されることが重要である。」が挿入されました。本件に関する提案者および関係者の意図や、社会の受け止め方は様々あろうかと推察しますが、私はまさに今回提案する『社会的総付加価値額経営(社会の付加価値額を増やす)』こそが、その精神を具現化した有力な経営指針となるのではないかと問題提起します。
最後に総括として強調しておきます。「経済成長(社会)」とは、自らの「経営環境」でもあるとの認識であり、公器としての企業の究極の経営理念・経営指針とも言えると考えます。「社会的総付加価値額経営」は、決して社会貢献活動のような狭小な視座から挑むものではありません。自社の将来の需要・人材・取引環境を維持拡大するための社会全体への能動的行動であり、企業のアイデンティティ・企業価値を超長期で広く社会に示すものです。
参考文献
17)福田敏彦『ニッポン、今こそ思い込みを捨てる時』日本橋出版、2026、P264~266
《6-4-2》CGコードを1個に(「逆・合成の誤謬」大作戦)
~同調大国の弱みを強みに変え、付加価値支出の増加を競争させる~
18)福田敏彦「付加価値創出を意識した経営へ《№20》」福田敏彦公式HP、20260811
19)福田敏彦「ステークホルダー経営の再定義(提案)《№26》」福田敏彦公式HP、20260823
❸「Ⅶ」(第7節)の位置づけ
本論文の最重要パート。あえて「新たなパラドックス」の主因であるはずの官投資・財政・金融政策議論を封印した上で、マクロ政策議論に関わらず個別企業が採用し得る経営指針を具体的に示すパートです。
経営が目指すべきKPIを経済成長とT直接リンクする「付加価値額」に置き、採択し得る経営指針について、視点・視野の変換を明確な定義で示し、さらにステークホルダーへの関与範囲として優劣でなく自律性の問題としてレベル化して可視化し、経済成長まで意識した経営指針を提示する。
❹関連情報(ブログ・書籍)~その先の議論へ~
👉論文連続連載➊~➏においての小見出しは、「理解を深める」でしたが、最終回の❼については「その先の議論へ」としました。これは論文としては以上で完結したという意味の他に、今般の提案内容について、その効果の議論に繋げたいからです。
この論文をお読み下さった方の中には、「社会貢献の支出」まで考えることは少々困難だと思われた方もいらっしゃると想像します。その場合、私が言いたいのは2つです。1つ目は、今まで通りの「付加価値を削る」ことにも繋がる「利益主義」「資本効率」経営で「新たなパラドックス」は克服できるのか?との反対質問です。そして、2つ目は、「新たなパラドックス」がなぜ起きているのかの本質的議論をしましょうと。失われた30年という経済環境(経営環境)を与件とする議論だけでなく、また、今回指摘した「合成の誤謬」以上の議論をしましょうと言いたいと思います。
その問題意識を集約しているのが、私がCGコード改訂の際に個人で提出した意見ですが、中でも意見❷は、先の2つ目の主張を表現していますのでご参照ください。
要点を3行で抜き出すと以下のとおりです。
「コーポレート・ガバナンス改革は、経営環境を大きく左右する日本経済・日本市場に関する財政政策や金融政策などとの総合的な視野の中で、合成の誤謬などの影響も考慮して議論されるべきです。」
当該論文で向き合ったのは、この後半部分に過ぎません。根本的な前半部分は何度も「封印」してとの表現を行ってきました。
さて、このパートでその根本的な議論を開始するわけにはいきませんので、重要な問題提起となる論点を2つ選んで、以下の既公表のブログ記事の掲載で代替しておきたいと思います。
👉多くの人が人口減少で経済成長しないと考えているようです。日本経済を成熟したから成長しないとの考え方もよく聞きます。この誤解を乗り越えないと「新たなパラドックス」の克服など到底無理だと思います。

👉現在トランプ政権から国家予算に近づく規模の対米投資などが求められています。株式投資なのか、事業投資なのかの視点は本論文でも「誤解」があることを指摘しましたが、他にも、日本企業と呼ばれる企業が海外に事業投資して生産を行ったときの付加価値がどこに生まれるかとの基本的な認識が社会では曖昧すぎると私は感じています。日本経済の付加価値という視点では、国内事業投資が直接貢献するものであり、アメリカで行うものはアメリカの付加価値に貢献しているものです。そして、これらの曖昧さの根底に、「経常収支」や「外貨準備」などの基本的な事項の解釈についても、誰に帰属しどのように生まれるものかが意識されないまま「誤解」に溢れていることにも起因していることを指摘しておきたいと思います。

👉最後に、拙著『ニッポン、今こそ思い込みを捨てる時』のキャッチコピーもご紹介しておきます。今回の実際のCGコード改訂では、見かけ上の原則が83個⇒30個になっていますが、私は本気で、たった1つの原則に変えればよいとの問題提起を行っています。
83個の企業統治原則をすべて捨てて、たった一つの『魔法の法則』に変えれば、私たちの給料は勝手に上がり始める!
ネタバレ気にせず公開します。「付加価値支出の増加率を開示せよ‼」
もし、CGコードがこの1原則になったと想像してみてください。そして、規範に真面目に取り組む日本企業が、「合成の誤謬」を、「新たなパラドックス」を克服する可能性について、今より成長した経営環境が生まれる可能性について考えてみてください。
拙著 第6章 第4節 株主第一主義を抑え、手取りが増える日本にする方法
拙著《6-4-2》CGコードを1個に(「逆・合成の誤謬」大作戦)
~同調大国の弱みを強みに変え、付加価値支出の増加を競争させる~
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