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Ⅵ 経済成長に必要な要素~付加価値経営の萌芽~(論文連続掲載➏)

執筆者の写真: 福田 敏彦
福田 敏彦
5 日前
読了時間: 6分

更新日:4 日前



連続掲載のお知らせ(固定掲示)


❶「Ⅵ」(第6節)の3行要約

  • 経済成長とはGDP(付加価値合計)が増加すること。付加価値とは個社の「人件費+利益」に相当するもので、総需要の乏しい経営環境下では、個別企業の「利益」ベースの価値向上の総和は、合成の誤謬でさらに経営環境を悪化させる。

  • DS経営を提唱されているスズキトモ教授は、成長投資ガイダンスにおけるEP(価値創造)は「利益」概念であり「付加価値額」でなく、ROE経営同様に人件費や研究開発費が抑制される可能性が高い点を指摘されている。

  • 定款で「付加価値額」を約束する企業『構造計画研究所ホールディングス』が登場。「総付加価値」=「営業利益+人件費+フリンジベネフィット」と定量的に定義し、『株主』と『従業員』に“ 量的に”配慮する企業であることを明示した。


❷本文 「Ⅵ」(第6節)まるごと掲載

第3部 提案


Ⅵ 経済成長に必要な要素~付加価値経営の萌芽~


1 GDPとの整合性


 経済成長とはGDP(付加価値合計)が増加することです。では、わが社はいくらGDPを産み出しているのかを答えられるでしょうか。結論から言えば、わが社の「人件費+利益」が付加価値であり、この国内総合計がGDPとなっています。


 コーポレートガバナンス・コードの冒頭には、四角く囲まれた「コーポレートガバナンス・コードについて」という説明書きがあります。この最後の部分「それぞれの上場会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、上場会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる。」が、コードの性格を示しているように思えます。

 

 つまり、個別企業の企業価値の結果としての合計が経済全体の発展に寄与する、「Σ(個別企業の価値向上)≒経済全体の発展」との考え方があると推定されます。私はここに大きな落とし穴があると考えます。その「個別企業の価値向上」が、誰もが「利益」ベースであった場合、これまでの論考で確認したように、デフレ経済の経営環境においては、「合成の誤謬」が起きて経営環境をさらに悪化させてしまう可能性が高いからです。

 


2 DS経営の提唱


 「付加価値とは企業が一年間に実現した価値(=収益)から、仕入などの外部生産価値を差し引いて計算される内部生産価値である。その全国の合計がGDPであり、『国民経済の健全な発展』の基礎を構成する」との正しい認識に基づき、DS経営(付加価値分配計算書による適正配分・投資経営)を提唱されているズズキトモ早稲田大学教授は、高市政権の下、「国民経済の健全な発展」との政策目標と、行政府や東証の政策手段(CGコード改訂、成長投資ガイダンス)は、従来通りの「利益」やその「率」の改善を掲げており、効率性の罠への省察が不十分と指摘されています。具体的には、EP(価値創造)は「額」だが、ROICスプレッドという「率」が用いられており「効率性の罠」は免れないことや、EP(価値創造)は「利益」概念であり「付加価値額」でなく、ROE経営同様に人件費や研究開発費が抑制される可能性が高い点を指摘されており(スズキトモ 2026:P12,

13,16)、私も大いに賛同するところとなっています。


3 「人件費+利益」を定款に謳う企業登場!


 2026年8月、構造計画研究所の定款変更のお知らせに私は驚きました。ついに、定款(企業理念条項新設)で「付加価値額=人件費+利益」を約束する企業が登場したのです。東証スタンダード市場に上場する『構造計画研究所ホールディングス』です。

 

(経営理念の3)                     当会社の経営指標は、営業利益に人件費とフリンジベネフィットを加えた「総付加価値」とする。

  ステークホルダー資本主義が、2019年頃から米国ラウンドテーブルやダボス会議で提唱され、「顧客、従業員、仕入先、地域社会、株主」への経営の配慮が叫ばれるようになりましたが、私は企業が対象を曖昧にしたまま具体的に定義もしないことを問題だと考えてきました。これに対して同社は、(経営理念の1)では様々なステークホルダーとし、(経営理念の2)では『人才』をオリジナルで定義するとともに、上記の(経営理念の3)において決定的に具体的な定義を示しています。


 しかも「総付加価値」=「営業利益+人件費+フリンジベネフィット」と定量的に定義されています。曖昧なままの「ステークホルダー」や「人」で止めず、語句はなくとも「従業員」だとはっきり理解できる基準で示したのです。営業利益は人件費を差し引いた数字ですから、それに人件費を戻し込み、さらにフリンジベネフィットを加えています。これだけで、『株主』と『従業員』に “ 量的に” 配慮する企業だとはっきり理念を示したことになります。素晴らしいことだと思います。



参考文献


15)スズキトモ 「コーポレート・ガバナンス改革と成長投資促進策の再考」商事法務№2426、2026、P12,13,16

 

16)株式会社構造計画研究所ホールディングス「定款一部変更に関するお知らせ」20260810、

東証上場会社情報サービス140120260911534736.pdf




❸「Ⅵ」(第6節)の位置づけ

  • 「経済成長」と「付加価値」の(会計的)定義と関係性を明確にし、あいまいな「企業価値向上」や「利益最大化」の総和は、総需要の乏しい経済情勢(経営環境)下では、合成の誤謬により経済成長に結びつかないリスクを明示するパート。

  • 学会や企業からも「付加価値額」経営の重要性を主張、表明する動きが現れていることを確認するとともに、特にスズキトモ教授は、成長投資ガイダンスに関する「利益」と「率」の問題点を指摘されていることを知らしめるパートです。



❹関連情報(ブログ等)~理解を深める~

👉『成長投資ガイダンス』は、個社が「付加価値額」を小さくしても市場から評価される従来同様の「利益」ベースの経営指標を示しています。「利益主義」は「付加価値」を削る構造要因となります。この定義のもといくら「稼ぐ力」などを強調しても、『新たなパラドックス』を解消するのは困難と言わざるを得ません。





👉アカデミーにおいて重要かつ貴重な知見を発表・提供されているスズキトモ教授の存在が、コーポレート・ガバナンス議論の進化を期待させてくれています。





『ワニの口』と聞くと、財務省のあれ?と私などは一瞬思い浮かべてしまうのですが、教授のそれは違います。「投資家への資金還元額>投資家からの資金調達額」状態をグラフで示されての表現のようです(私の解釈)。ありがたいことに、以下のリンクから「証券コード」を代入するだけで、個別企業の経営が可視化できます(現在は無料開放とのこと)。



研究者詳細 - スズキ トモ(早稲田大学研究者データベース)



👉定款に経営理念として付加価値額を定義する企業が『構造計画研究所ホールディングス』です。曖昧な企業価値やステークホルダーを掲げている企業とは一線を画す、経済への正しい理解を前提に自律した理念を示している企業として注目したいと思います。







❺第3部 「Ⅶ」(第7節)への繋がり

  • 経済成長のない経営環境で、個別企業が「利益最大化」「資本効率」だけを負う経営「資本コストや株価を意識した経営」を強いられると、その企業行動の総合計は「合成の誤謬」により「経済成長のない経営環境」を生んでしまうスパイラルに突入する。

  • それを克服するための、本論文の最重要パートであり、誰も言及していない「経済成長」のための経営指針を提案する「付加価値創出を意識した経営」に繋げます。



リンク

論文全文





新刊詳細『ニッポン、今こそ思い込みを捨てる時』 | Toshihiko Fukuta 公式サイト








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