Ⅲ 株主構成の変化とCGコード(論文連続掲載❸)


連続掲載のお知らせ(固定掲示)
❶「Ⅲ」(第3節)の3行要約
失われた30年初期に起きた「銀行・生損保」から「外国法人等」「信託銀行(機関投資家)」への株主構成の変化。その要因として、金融自由化があり、複合的には米国からの構造改革要請、日本企業の海外進出などがあった。
CGコードの原則1「外国人株主」や「少数株主」に対する配慮とは、その定義から、「外国人株主等(外国法人等・機関投資家)」の意見反映への配慮となっている。
「資本コストや株価を意識した経営」において、外国法人保有比率34.7%、株式売買状況として海外投資家売買比率常時70%強が示すように、株価や経営についてもグローバル投資家の期待を反映する構造になっている。
❷本文 「Ⅲ」(第3節)まるごと掲載
第2部 構造分析(経済環境以外の原因・理由)
Ⅲ 株主構成の変化とCGコード
1 近現代に起きた株主構成の変化
『失われた30年』と呼応するかのように、日本の企業統治には革命的な変化が起きました。あらためて確認が重要であると考え、私の解釈を交えて振り返っておきます。東証が公表する株式分布状況調査を見ると、銀行・生損保等は1995年を過ぎたあたりから急落していることが確認できます。そして、入れ替わるように真逆の動きでほぼ一直線に上昇していく「外国法人等」と、同じく2000年前半までは外国法人と同様の動きであった「信託銀行(機関投資家=他人資産を受託運用する機関)」が資本の所有者として入れ替わっていきました。「金融自由化」による自己資本比率規制(BIS規制)や時価会計などの国際会計基準導入という「グローバル・スタンダード」によって、銀行はボラティリティ(時価変動性)の高い株式保有に限界が生じ手放さざるを得なくなり、それと入れ替わるように、外国人株主が株式取得を拡大して企業統治者が入れ替わりました。もちろん、複合的背景として1980年代半ばからのアメリカからの構造改革要請(規制改革要望書へ)や、日本企業の海外進出(国内空洞化)などがあったことも重要です。
やがて「外国法人等」が約30%水準となる2015年に、わが国ではCGコードが導入されます。その後、2019年には株主第一主義から脱却するとのステークホルダー資本主義が、世界経済フォーラム(ダボス会議)や米国ラウンドテーブル(米主要企業の財界ロビー団体)によって提唱されるようになり、2022年には東証の市場区分見直し、2023年の岸田政権による資産運用立国宣言、「資本コストや株価を意識した経営へ」の取組み要請へと段階的に進められてきました。
2 CGコードの1丁目1番地
東証の定義(FAQ管理番号8560)によれば「支配株主」とは親会社や過半数議決権者(オーナー経営者等)を指し、「少数株主」はその支配株主(およびその近親者・関係者)以外の株主(ガイドブック:管理番号7790)とされています。
「少数株主」に関する原則は、コーポレートガバナンス・コードの1丁目1番地である基本原則1に「外国人株主」とともに登場します。「少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。」がそれです。
ここで、前項の株主構成の構造変化を踏まえると、今日の「少数株主」の実質的マジョリティは、 ①外国法人等 ②スチュワードシップ・コードに基づき外国法人等と近似した価値観で企業経営に関与する機関投資家(信託銀行) である「外国人株主等」との理解も可能です。その事実認識から、基本原則1の「少数株主や外国人株主への十分な配慮」の意味を考えると、会社法109条1項の「株主平等の原則」(=株式数に応じた平等)を超えて、「外国人株主等」(外国法人等・機関投資家)の意見の反映に対する配慮が意図せず求められている構造になっていると指摘できるのではないでしょうか。
資本コストや株価を意識した経営が一層求められる状況の下で、外国法人等の株式保有比率は2025年度公表ベースでは34.7%に達しており、株式週間売買状況においては海外投資家の売買比率が常態として70%強の水準にあります。これらの事実は、日本株の価格形成に対する海外投資家の影響力が極めて大きいことを物語っています。日本企業は、経営判断や資本政策においても投資収益率や資本効率を重視するグローバル投資家の期待を反映しやすい環境になっていると言えそうです。
参考文献
8)東京証券取引所「2025年度株式分布状況調査の調査結果について」20260702、P5
9)東京証券取引所の定義:支配株主(FAQ管理番号8560)【支配株主等に関する事項】「支配株主」の定義について教えてください。 - 上場会社向けナビゲーションシステム、
少数株主(ガイドブック:管理番号7790)faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge7790.html
10)東京証券取引所「株式週刊売買状況」
❸「Ⅲ」(第3節)の位置づけ
「株主構成の変化」、「CGコードの基本原則1」、「支配株主」、「少数株主」などに対する定義の確認を含めた丁寧な事実認識や解釈の必要性を問題提起するパートです。
株主構成の変化は、自然にではなく、社会の意思(法・ルール・規制などで表出)によって起きたものであることを示唆しつつ、本論考では詳述展開は控えるものの米国からの規制改革要請や、日本企業の海外進出なども総合して考えるべきとの問題意識を含ませている。
❹関連情報(ブログ)~理解を深める~
👇本論考では詳述を割愛しましたが、「外国人株主」や「少数株主」については、CGコード原則4-8や、今回の改訂で冒頭に記された「株主への受託者責任」など、書かれていること、変更された記載順序などについても総合的かつ丁寧な確認・解釈をすべきと考えます。この論点に対する意見としてパブコメ意見も提出していますので、併せてご確認ください。

👇政策保有株式縮減に関する意見(パブコメ意見➑)の中で、株主構成の変化に関係する日米構造協議など歴史的経緯に触れている部分がありますのでご参考までにリンク掲示します。
❺第2部 「Ⅳ」(第4節)への繋がり
コーポレート・ガバナンス改革議論の大前提として、共通理解されていなければならない『株式市場』における資金供給機能や、一般社会でも専門分野でも広く使われる『投資』に対する理解に「思い込み」あるいは「誤解」があるとの重要かつ深刻な問題提起につないでいきます。
リンク
論文全文
新刊詳細『ニッポン、今こそ思い込みを捨てる時』 | Toshihiko Fukuta 公式サイト


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