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Ⅱ コストカット型経済(=合成の誤謬)が起きる状況認識(論文連続掲載❷)

執筆者の写真: 福田 敏彦
福田 敏彦
9月25日
読了時間: 6分

更新日:9月26日



連続掲載のお知らせ(固定掲示)



❶「Ⅱ」(第2節)の3行要約
  • 岸田政権では、失われた30年を『コストカット型経済』と認識、これこそが『合成の誤謬』です。

  • 高市政権は、失われた30年を国内投資不足が原因であったとし、『投資による財政の持続可能性』を掲げている。

  • 官民連携投資で「官投資」が不発であった場合、『合成の誤謬』を脱却できないと問題提起。(官投資・財政政策議論を封印して、個別企業が取組可能な施策の範囲で論考を進める)



❷本文 「Ⅱ」(第2節)まるごと掲載

第1部 問題提起



Ⅱ コストカット型経済(=合成の誤謬)が起きる状況認識


1 『コストカット型経済』


 岸田文雄首相は、2023年10月23日の所信表明演説において、我が国の「失われた30年」について、日本社会で何が起きてきたかの認識を示します。『コストカット型経済』がそれです。「この三十年間、日本経済はコストカット最優先の対応を続けてきました。人への投資や賃金、さらには未来への設備投資・研究開発投資までもが、コストカットの対象とされ、この結果、消費と投資が停滞し、更なる悪循環を招く。低物価・低賃金・低成長に象徴される『コストカット型経済』とも呼び得る状況でした。」とされたのです。


 これは、首相による画期的な発言であったと思います。『コストカット型経済』の認識が示しているのは、『合成の誤謬』の現実です。『合成の誤謬』とは、1人ひとり(個別会社)にとっては「良い」とされる行動であっても、全員が同じ行動を実行したことで、想定とは逆の「悪い」全体結果(経済社会全体)を招いてしまうことを指します。岸田首相が示したのは個別企業にとっては合理的なコストカット経営が、経済社会全体の不都合な低物価・低賃金・低成長をもたらしたとの評価を明らかにしたのです。


 この『コストカット型経済』に関連して、当時れいわ新選組の山本太郎議員が、11月28日の参議院予算員会における質問で、法人企業統計調査(資本金10億円以上の企業)を元に財務省の官僚に回答させた内容は、まさに『コストカット型経済』の不都合な実態を示すものでした。1997年を100として25年後に当たる2022年を示すと、売上は横這いであるにも関わらず、経常利益は4倍、配当は8倍となります。つまり、コストカットで給与を伸ばせず、設備投資を大きく削り、経済成長を阻害したものの、利益・配当を伸ばす株主還元は進展した現実が示されていました。


2 石破政権と高市政権の違い


 日本成長戦略会議の有識者構成員であり、高市政権の経済ブレーンであるクレディ・アグリコル証券チーフエコノミストである会田卓司氏は、石破政権と高市政権のスタンスの違いを次のように説明しています。石破政権は、人口動態の悪化、少子高齢化・人口減少もあり、経済停滞から脱するのは難しいとの立場から、今後懸念される大災害や有事のためにも、出来るだけ「今」節約をして財政余力を確保して、財政を持続可能なものにする『節約による財政の持続可能性』を達成するとの考え方であったとされています。一方、高市政権は、日本経済の停滞の原因は人口動態の悪化ではなく、国内投資の不足という意思の問題との立場から、官民連携で投資を拡大し供給能力を強化して、経済規模拡大・税収基盤強化につなげ、強い経済と財政の持続可能性を一体的に実現する『投資による財政の持続可能性』を達成するとの考え方であると強調されています。


 ここで認識すべきは、同じ『財政の持続可能性』にも関わらず、方法論が真逆である「節約」と「投資」である点と高市政権についての実績はこれからである点です。もし高市政権による「投資」が不発だったとしたら、再びコストカット型経営、経済になってしまう可能性があるということです。


 ちなみに私は、先進国の中で唯一成長しなかった国家の不都合な経済状態が、個別企業の努力不足だけであるはずがないとの立場です。財政政策や金融政策、さらには外交政策のようなマクロ政策なども加味した、部分最適ではない全体最適での評価・議論が必要だと考えています。低迷した日本経済を成長軌道に回復させるためには、政府支出を今年より来年、来年より再来年と増加させる必要があると考えていますが、その議論はここでは封印して、政府投資に関わらず、個別企業として取り組める経営方針は何かとの議論に特化してこの論考を進めたいと考えます。



参考文献


4)岸田文雄「第212回臨時国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説」自民党、20261023

 

5)山本太郎「2023年11月28日参議院予算員会」山本太郎チャンネル、20231128

 

 6)会田卓司「ベッセント財務長官『日本はリフレを止めるべき』発言の真相」ニュースの争点、20260907 https://www.youtube.com/watch?v=KAVcIbDTXHI&t=1172s



❸「Ⅱ」(第2節)の位置づけ
  • 「新たなパラドックス」≒「コストカット型経済」≒「合成の誤謬」の認識を明らかにして、高市政権が、石破政権までの「官」の投資不足を問題視し、「節約」ではなく、「投資」の重要性を強調していることを認識する。一方、「官」の投資実現状況によっては、個別企業の経営環境は従来同様に厳しい可能性もあることを指摘する。

  • 私の総合的な問題意識としては、経営環境については、財政・金融政策などのマクロ政策議論を交えるべきとの意見ですが、今般の論考においてはそれを封印して、あくまで個別企業が採用しうる経営指針に特化させた議論を展開することを宣言するパートとする。


❹関連情報(ブログ)~理解を深める~

👇石破政権が特に緊縮財政であった事実を日銀資金循環統計からも確認してください。



👇高市政権が、「官投資」を拡大できない可能性についての認識を深めてください。






❺第2部 「Ⅲ」(第3節)への繋がり

  • 経営環境(経済情勢)に対するマクロ政策議論を封印したとしても、個別企業行動が経済全体に与える「合成の誤謬」は無視できないとの立場・主張から、経営環境(経済情勢)を与件としても、「新たなパラドックス」解消には構造的問題があることを指摘する第2部へと繋げていく。

  • 構造的問題においては、「投資」や「株式市場」について広く誤解されている重要な視点も影響していることを示唆する。


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論文全文





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