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RMT(法令遵守の貨幣理論)

Ⅳ 株式市場の実体~思い込みの修正~(論文連続掲載➍)

執筆者の写真: 福田 敏彦
福田 敏彦
7 日前
読了時間: 8分


連続掲載のお知らせ(固定掲示)


❶「Ⅳ」(第4節)の3行要約
  • 株式市場は、資金調達手段として機能していない。「成長資金の供給拡大」を意図した「貯蓄から投資へ」だが、新規株式発行は毎年発行済み株数の1%にも満たず、「貯蓄から投資へ」の前提である「貯蓄による金融資産等のストックが急速に減少する事態」(伊藤レポートでも想定された)も起きず逆に増え続けている。

  • 権威筋でさえ、海外投資家からの株式投資を事業資金投入であるかのような誤解や、「利益」が「付加価値」と同じであるとの誤解があり、スズキトモ教授も誤解・思い込みとして指摘されている。

  • 株式所有権移転のおカネの投入で外国人株主に主要株主が入れ替わり、経済成長の乏しい経営環境下一層の利益最大化・資本効率経営が求められ「合成の誤謬」の悪循環となったのではないか。


❷本文 「Ⅳ」(第4節)まるごと掲載

第2部 構造分析(経済環境以外の原因・理由)


Ⅳ 株式市場の実体(思い込みの修正)


1 資金調達or所有権移転の市場


 株式が企業の資金調達手段であることは間違いありませんが、手段であることと、実際にそうなっているかは別物です。


 2023年1月23日の岸田首相の施政方針演説の投資と改革に関して語られた「長年の懸案である『貯蓄から投資へ』の流れを実現できれば、家計の金融資産所得の拡大と、成長資金の供給拡大により、成長と資産所得の好循環を実現できる。」における「成長資金の供給拡大」や、初代伊藤レポートにおける「貯蓄による金融資産等のストックが急速に減少する事態に向かいつつある中、限りある資源や資本を浪費する余裕はないのである。」における「急速に減少する」は正しかったのでしょうか。


 日銀資金循環統計によると、レポートが発表された直前2014年6月の家計の金融資産(うち現預金)は、1,706兆円(約895兆円)で、2026年6月のそれは2,519兆円(1,132兆円)となり、この間一度も減少などしていません。当時著名な経済学者などによる、高齢者の預金取り崩しにより預金そのものが減少していくとの主張がありましたが、明らかに誤りであったことがわかります。そもそも、高齢者が預金を使っても、誰か別の法人、個人の預金に移るだけの話です。従って、伊藤レポートの「急速に減少する」は間違っていたと言えるでしょう。


 では、岸田総理の発言の方はどうでしょうか。東証が公開している統計データで2024年までの7年間を確認してみます。2024年末現在の上場会社数は約4,000社で、合計5,000億株が発行されています。2017年末の3,450億株が7年間で1,550億株ほど増えましたが、そのほとんどは株式分割であり、資金調達のための新規発行株数は、毎年平均で30億程度に止まり、発行済み株数の1%にも達していません。つまり、株式市場では既発行株式の売買がほとんどであり、発行会社の資金調達手段とはなっていないという現実です。岸田総理の言う「成長資金の供給拡大」は実現されていないということです。


2 「思い込み」による投資の意味


 後の項目でご紹介するDS経営を提唱されている早稲田大学教授のスズキトモ氏が、商事法務№2426への寄稿で興味深いことを記されていました。「Ⅳ利益最大化の真相構造」において、監督官庁幹部のみならず、一般市民や政治家やメディア、さらには官僚や研究者や企業経営者にも浸潤している「誤解」あるいは「思い込み」を指摘されているのです。一つ目は、「投資の意味」に関する「誤解」です。海外投資家からの株式投資について、ある官僚幹部があたかも企業の事業資金として活用される資金投入であるかのような文脈で語っているとの指摘です(スズキトモ 2026:p14)。もちろん既発行株式への投資とは株式の所有権移転であり、発行事業会社の資金には何も関係がありません。そして二つ目が、「利益」と「付加価値」についての「誤解」です。GDPは「利益合計」ではなく「付加価値合計」ですが、あたかも「利益」が「付加価値」であるとの妄信があるとの指摘です(スズキトモ 2026:p14)。この指摘は、本稿「Ⅱ-1コストカット型経済」で指摘した「合成の誤謬」、つまりΣ個別企業の企業価値向上が経済成長に繋がっていない大きな原因にもなっていると考えます。


 ここまでの事実認識を繋ぐとどうなるでしょうか。少なくとも、これまでの失われた30年のように経済成長が乏しい経営環境において、外国人株主等が所有のおカネ(既発行株式売買)で株式市場での影響力を強めていく中、さらに利益の最大化や資本効率経営がCG改革においても強く求められた結果、「合成の誤謬」による経済成長の阻害が起きる悪循環があったと言えないでしょうか。



 私は、拙著『ニッポン、今こそ思い込みを捨てる時』(日本橋出版)において、RMT(法令遵守の貨幣理論:Regal compliance Monetary Theory)との視座を示しております。貨幣理論と表現しているものは、貨幣における二つの重要な観察事実を意味しており、一つが「信用貨幣論(おカネは負債として作れる)」であり、もう一つが「二つあるおカネの使い道」のことになります。後者は、おカネの使い道は二種類のみ、世の中の誰かの所得(付加価値)になるものと、当事者間の所有権移転であるものがあり、株式投資や土地などの資本財に使われるおカネの効果は付加価値創造ではなく所有権移転のみであるとの整理を示しています。



参考文献


7)福田敏彦『ニッポン、今こそ思い込みを捨てる時』日本橋出版、2026


11)岸田文雄「第211回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説」自民党、20230123

 

12)伊藤邦雄「『持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト(伊藤レポート)」経済産業省、2014、P4

 

13)「資金循環統計(速報)(2026年第2四半期)」日本銀行、20260917、参考図表:2026年第2四半期の資金循環(速報)、主要時系列統計データ表

 

14)日本取引所グループ 「統計月報」統計月報 | 統計情報(株式関連) | 日本取引所グループ👇イラストデータご参照

 

15)スズキトモ 「コーポレート・ガバナンス改革と成長投資促進策の再考」商事法務№2426、2026、P





❸「Ⅳ」(第4節)の位置づけ
  • 株式市場が資金調達市場として機能していない事実は、期待に反して生じた現実のくい違いの類ではなく、そもそもの既発株式売買の意味、「貯蓄から投資へ」の実際のおカネの移動や、高齢化などで貯蓄が社会で減少するとの誤解があることを指摘するパートです。

  • 経済成長しない社会で、根本的な誤解のもと、付加価値でない「利益」最大化や資本効率経営が行われたら、必然的に「コストカット型経済=合成の誤謬」が起きたことを指摘するところまで展開させています。


❹関連情報(書籍等)~理解を深める~

👉誰かがおカネを使わないと、誰の所得も生まれません。でも、さらに重要なことは「おカネの使い道には二通りがある」との理解です。私は拙著『ニッポン、今こそ思い込みを捨てる時』(P84~87)において、RMT(法令遵守の貨幣理論)の主要論点としてこの理解を提示しています。


拙著《3-1-4》(基本❹)投資を呼び込む ~二種類あるおカネの使い道~

         ~所有(支配)のカネと付加価値(GDP=所得)のカネ~

新刊詳細『ニッポン、今こそ思い込みを捨てる時』 | Toshihiko Fukuta 公式サイト


既発行株式や土地、中古品(何も手を加えないもの)の売買が、所有権移転としてのおカネの使い道であり、新品や事業などに投入されるおカネが付加価値としてのおカネの使い道です。本文掲載で示したイラスト👆を参照してください。


👉また、歴代の日本の首相によるシティやウォール街での発言👇も確認してください。岸田首相は、「インベスト・イン・キシダです」と日本語が混ざったことで、「Death(死)に投資とは?」のような小さな混乱を招いたとも言われていました。高市首相は、アニメ進撃の巨人の有名なセリフを引用したようです。いずれにせよ、経済成長させるために海外からの投資を呼び込んでいるわけですが、それが付加価値に回るおカネでなく、所有権移転のためのおカネとなれば、経済的な効果は明らかに異なってくるという必然です。首相たちはこれをどこまで理解していた(いる)のでしょうか。



※イラストの凧の意味は、岸田首相のシティでの演説の際にチャーチルを引用して「再び高く舞う凧としてここに戻ってくることを約束する」と語ったことを私なりの解釈で表現したものです。皆さんならどんなイラスト表現されるかぜひ考えてみてください。


👉資金循環統計を用いて、家計の金融資産(預貯金)は減少することなく増え続けていることを本論文では指摘しましたが、その先に論文には書かなかった大事なことがあります。それは、家計としては増えていますが、中身では、格差が進行し、国民の多くは貧困化している深刻な現実についてです。多くの国民が貧困化している状況で、経済社会に強い総需要は生まれません。企業に優しい経営環境は訪れません。つまり、「新たなパラドックス」を超えられない、だからこそ本論文は、それを克服する「経営指針」を提言しています(第3部)。



❺第2部 「Ⅴ」(第5節)への繋がり

  • コーポレート・ガバナンス改革を考えるとき、制度・しくみ・構造のような大前提の解釈に問題があってはなりません。「Ⅳ」で言及した誤解や思い込みの延長線上に、株主資本統治と銀行統治についての定説的な誤解が存在していることに繋げます。



リンク

論文全文





新刊詳細『ニッポン、今こそ思い込みを捨てる時』 | Toshihiko Fukuta 公式サイト








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