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特別号 CGコード改訂パブコメ意見❼「事業ポートフォリオ/ベストオーナー論の弊害」

  • 執筆者の写真: 福田 敏彦
    福田 敏彦
  • 6月10日
  • 読了時間: 4分

私が提出したパブコメ意見❼を公開します。


東証および金融庁は、コーポレートガバナンス・コード改訂に際し、パブリックコメント手続きを実施しています(リンク先は東証による運用説明)。


ご注意:これは1分では読めません。


今回、私が提出したパブコメ意見❼を以下に公開します。(❾まで続きます)



事業ポートフォリオ見直し(いわゆるベストオーナー論)を一般規範化することの弊害について意見を述べます。


事業ポートフォリオの見直しがコーポレートガバナンス・コードに組み込まれたのは2018年改訂からであり、その後、マッキンゼーのフレームワークに端を発するとされる「ベストオーナー」概念が日本で制度的に位置づけられたのは、2020年7月31日付の経済産業省「事業再編実務指針」の公表以降だと理解しています。現在では、資本効率経営の名のもとに事業別ROICが奨励され、本業以外の事業は一律に「非中核」とみなされる風潮が強まっています。


しかし、ベストオーナー概念に基づく事業ポートフォリオ見直しは、本来、個社が自律的に判断すべき経営戦略であり、また株主が個別に要求することも自由である一方で、これを一般化し、社会規範として企業全体に適用することは重大な問題です。ベストオーナーだけが事業を保有する世界は、独占・寡占化を促し、結果として大企業中心の市場構造を強化します。その過程で、中堅・中小・零細企業、さらには個人事業者が担ってきた多様な事業機会や付加価値創出の余地が奪われることになります。大企業が潤えば経済全体が潤うという「トリクルダウン」は現実に起きておらず、むしろ逆の結果が生じていることは、統計的にも明らかです。


さらに、不動産賃貸事業は、多くの企業で「本業ではない」との理由で売却対象とされ、実際に売却が進んでいます。しかし、不動産事業は本業の景況に左右されない独立的な価値を持ち、将来の経営悪化時には、株式発行や銀行借入に代わる重要な資金調達手段となり得ます。売却だけでなく、担保力としての価値も含め、企業の財務安定性を支える重要な資産です。したがって、不動産事業を温存する戦略は十分に合理性があり、企業ごとの多様な戦略として尊重されるべきです。


しかし現実には、コーポレートガバナンス・コードと経済産業省の指針などが複合的に作用し、企業社会において「不動産事業は手放すべき」という単一の価値観が形成されつつあります。その結果、日本企業が保有してきた不動産が海外資本に大量に取得される状況が懸念されており、経済安全保障の観点からも看過できません。


金融庁や東証は、「本コードはプリンシプルベースであり、大掴みの原則を示しているに過ぎない」「エクスプレインを積極的に認めている」と反論されるかも知れません。しかし、原則を適用される側が「実施しない理由を十分に説明する」ことを求められる状況は、一般社会における常識として自律性が確保されているとは認識されません。むしろ、政府・行政(内閣府・金融庁・経産省)と東証が連携して進めるガバナンス改革は、公共性と社会的インパクトが極めて大きく、結果として企業行動を強く拘束しているという事実を直視すべきです。


もし、ベストオーナー概念に基づく事業ポートフォリオ見直しを、企業に対する一般規範として位置づけることが正当であると考えるのであれば、それは本来、会社法改正など、国会での民主的手続きを経て法制化の是非を議論すべき内容です。行政文書と上場規則の組み合わせによって、実質的な規範を形成する現在の手法は、透明性・正統性の観点から重大な問題を孕んでいます。


パブリックコメントは、東証にとっての「建設的な議論」の場であり、寄せられた意見こそが、東証に対する「独立社外取締役」としての外部監督機能を果たすものです。この観点から、寄せられた意見に真摯に向き合い、検討過程を含めた透明性の高い説明責任を果たす開示がなされることを強く要望します。

 
 
 

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