特別号 CGコード改訂パブコメ意見❶「パブコメが東証にとっての社外取締役」
- 福田 敏彦

- 5月4日
- 読了時間: 4分
更新日:4 日前
私が提出したパブコメ意見❶を公開します。
現在、東証および金融庁は、コーポレートガバナンス・コード改訂に際し、パブリックコメント手続きを実施しています(リンク先は東証による運用説明)。
ご注意:これは1分では読めません。
今回、私が提出したパブコメ意見❶を以下に公開します。
コーポレートガバナンス・コードは、国会で審議され制定される会社法のようなハードローではなく、日本取引所グループの子会社である東京証券取引所の取締役会により決定される上場規則です。その策定・改訂に関与する東京証券取引所の取締役会メンバー、金融庁・財務省・経産省の担当者、有識者会議の構成員はいずれも選挙による民主的手続きによる正統性を持つ主体ではありません。
このため、公共性が極めて高い規範であるにもかかわらず、制度上、民主的統制の仕組みが存在しないという構造的問題を有しています。ソフトローであるからこそ、民主的統制の欠如を補う唯一のプロセスがパブリックコメントであり、決して任意適用しているとの形式論では許されず、また当該運用が形式的に処理されるとすれば、制度全体の正統性を根本から損なうものと考えます。
前回の2021年改訂におけるパブリックコメントの取り扱いを分析すると、回答は概ね以下の3類型に分類され、追加議論や再審議につながる構造にはなっていませんでした。
❶賛成意見:「改訂の趣旨を評価いただきましてありがとうございます」
❷反対意見(緩和方向を含む):東証側の考え方を繰り返すのみで、議論や再考の道筋が示されない
❸より厳格化を求める意見:「貴重なご意見として承ります」とするのみで、検討プロセスが不明確
こうした形式的な処理は、ソフトローの民主的正統性を支えるパブリックコメント制度の趣旨に照らして適切とは言えず、制度への信頼性を損なうことは自明です。
さらに、他の省庁でも繰り返されているように、事務局案に対して包括的に『これでよいですか』『皆がうなずく』という形だけの確認を行い、実質的な議論を伴わないプロセスが常態化している現状があります。これは、形式的には手続きを踏んでいるように見えても、実質的には議論の機能を果たしていない“パフォーマンス”に過ぎません。
ここで、今回の改訂案が掲げるコーポレートガバナンス・コードを、あえて引用します。
本コードの目的
「本コードが定める原則は、経営陣にとっての制約と捉えることは適切でなく」「実施しない理由を十分に説明することにより、(中略)エクスプレインを積極的に選択すべき」「具体的な取り組みの内容及び当該取組により原則を実施していると評価できる合意的理由を示すこと(中略)も建設的な対話に資する取組みとして望ましい」
基本原則1「少数株主(中略)については(中略)十分に配慮を行うべきである。(中略)株主との間で建設的な対話を行うべきである」
基本原則3「法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。」
原則4-1:「(取締役会は、)建設的な議論を行うべきである」
原則4-3:「(取締役会は、)客観性・適時性・透明性ある手続きを確立すべきである」
原則4-8:「(独立社外取締役は、)取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと」
これらの原則は、企業に対して求められる規範であると同時に、このコードを決定する東京証券取引所自身が最も厳格に遵守すべき規範でもあります。なぜなら、 パブリックコメントこそが、東証にとっての「建設的な議論」であり、 寄せられた意見こそが、東証に対する「独立社外取締役」としての外部監督機能を果たすからです。企業に対して「建設的な議論」「透明性ある手続き」「社外役員による監督」「積極的な開示と対話」を求めるのであれば、 まずはこのコードを決定する側が、その精神を体現する必要があります。
我が国が民主主義国家を標榜するのであれば、「形だけの合意形成」が看過されるべきではありません。パブリックコメントは、「本来法令外の任意適用であっても主体的に取り組むべきものであり」、単なる儀礼的確認ではなく、十分な時間をかけて「建設的な議論を行い」、外部者あるいは顧客企業からの「監督機能」であると位置づけ、「少数者からの意見に配慮し」、採用しない場合も「客観性・適時性・透明性ある手続きにおいて」「合理的理由を示す」必要があると考えます。その意味で、東京証券取引所は、パブリックコメントを「制約と捉えることは適切ではなく、企業価値向上原則を後押しするもの」と理解すべきであり、繰り返しになりますが、今回の改訂においては、寄せられた意見に対し、透明性のある検討過程と実質的な議論を伴う対応がなされることを強く要望します。

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